繰延べ
(○-○) 繰延べ(くりのべ)を学ぶのだ。
たとえば事務所として賃貸住宅を借りる契約をして、1年間の家賃を一括先払いしたとする。
その家賃は経費(費用)にできるけど、1年分をいっきに経費にはできないんだ。
(・∀・) ほぉ。
(○-○) 今期に使った分のみ経費に算入できる。
9月に家賃を一括払いして ¥1,500,000 を現金で支払った。(支払家賃→費用+、現金→資産−)
(借) 支払家賃 1,500,000 (貸) 現金 1,500,000
(・∀・) ん、いきなり全額費用になってるけど…。
(○-○) 決算。費用を来期に繰り延べるぞ
今年12/31の決算のときは 9,10,11,12の4か月分だけ費用算入できる。
前払家賃(資産+) 支払家賃(費用−)
(借) 前払家賃 1,000,000 (貸) 支払家賃 1,000,000
ここで「前払」ってのは「先払い」というか「先に払いました。払い済みです。すでに払ってます」って意味な。
(・∀・) 支払家賃(費用)が前払家賃(資産)になった!?
(○-○) まだ使われていない支払家賃は費用にしないほうが、帳簿が正確になるだろ?だから費用をマイナスしているんだ。
前払家賃は「来期で使われる支払家賃」だから、まだ使われていないお金→資産 ということ。
でもこれは決算のために一時的に資産にしている(振り替えている)だけだ、すぐ次でまた費用に戻す。
決算の直後、次期の期首に、決算のときと逆の仕訳をすることで、前払家賃(資産)は前期のと相殺して存在を消し、もとの勘定つまり支払家賃(費用)に戻す。
支払家賃(費用+) 前払家賃(資産−)
(借) 支払家賃 1,000,000 (貸) 前払家賃 1,000,000
(○-○) これは再振替仕訳(さいふりかえ しわけ)というんだ。
(・∀・) なるほど、決算時点ではまだ使ってない権利は、 正確なB/Sを作る(今いくら持っているかを一覧にする)ために、決算のときだけ一時的に資産として計算するんだね。
(○-○) 収益も繰り延べることがある。
9月にお金を貸した利息のこれから1年の分 ¥180,000 を一括でうけとった。(受取利息→収益+)
(借) 現金 180,000 (貸) 受取利息 180,000
今年12/31の決算のときは 9,10,11,12の4か月分だけ収益に算入できる。つまり受け取った利息のうち、残りの8か月は収益からマイナスする(受取利息→収益−、前受利息→負債+)
(借) 受取利息 135,000 (貸) 前受利息 135,000
ここで「前受」ってのは「先受け」というか「先に受け取りました。受取済みです。すでに受け取っています」って意味な。
繰り延べの場合は「前払い〜」「前受け〜」になるぞ。前受け→すでに受け取った→あとで使用する義務がある→負債、前払い→すでに払った→なんか権利を得た→資産 と考えてもいい。
(・∀・) 「前」って「すでに」ってことなんだね。
前受利息は負債なのか?
(○-○) すでに受け取っていて、来期(の自分)に払わなくてはならないものだから、負債だ。
というか「B/Sを作るために、B/Sの構成要素ではない収益・費用の勘定項目は、B/Sの構成要素つまり資産・負債・純資産に一度変換する」必要があるから、負債になってるだけとも言える。次の仕訳ですぐに収益に戻すぞ。
決算の直後、次期の期首に、再振替仕訳する。(受取利息→収益+、前受利息→負債−)
(借) 前受利息 135,000 (貸) 受取利息 135,000
(○-○) この再振替仕訳で、決算のときだけ使う「前受利息」勘定は0になって、受取利息が今期の収益になっているというわけだな。
見越し
繰延べの次は、見越し(みこし)を学ぶぞ。
9月に土地を借りた。代金は1年毎に ¥510,000 後払いする。
仕訳なし
(・∀・) ふーん、仕訳がないのか。土地を借りてるという行為はあるのに、仕訳がないのは納得いかないな。
(○-○) 簿記の取引というのはお金が動くところにあるからな。
(・∀・) でも、商品を掛けで仕入れるときは、商品を受け取ってお金は払わないで買掛金扱いだけど、簿記の取引になるよね。
ここでもお金は後払いで土地を借りてる。似たようなものだと思うけど。
(○-○) ……(ちょっと待て)
商品は全部受け取ってるから取引になるが、土地は全部(1年まるごと)受け取ってないだろ。
決算では、当期分(1年の3分の1)の費用を計上する。(支払地代→費用+、未払地代→負債+)
(借) 支払地代 170,000 (貸) 未払地代 170,000
(○-○) この仕訳は分かるな? 支払地代は今期の9,10,11,12月に借りた地代代金だ。といっても、支払はまだしてなくて来期に払うので、いわば来期に向けて借金してるわけだから未払地代は負債だ。
この「未払」ってのは、「未だ払っていない…、まだ払っていない」という意味だ。
(・∀・) この場合は最初から費用や収益じゃなくて、負債っていうB/Sに載る勘定項目だね。だから、再振替仕訳がいらない…?。
(○-○) それが再振替仕訳は必要なんだ。なぜかっていうと「同じ取引で同じ仕訳を作る」ためだ。
もし再振替仕訳しなかった場合は、
来年8月に地代を払う→負債(未払地代)がなくなる 負債−、支払地代→費用+、現金減少→資産−
(借) 支払地代 340,000 (貸) 現金 510,000 未払地代 170,000
ってするかと思うかもしれないがそうじゃない。
実際には再振替仕訳するから、来期の期首に以下の逆仕訳をする。
(借) 未払地代 170,000 (貸) 支払地代 170,000
(・∀・) この仕訳にはどんな意味が?
(○-○) この仕訳で、決算のときだけ出てくる未払地代(負債)の勘定を消す。そしてB/Sでは仮に払ったことにした支払地代(費用)も消す(払っていないことにする、というかまだ払っていないのだからこちらのほうが正しい)。
こうすると、来期の8月に地代を払うときの仕訳がこうなる。
→支払地代→費用+、現金減少→資産−
(借) 支払地代 510,000 (貸) 現金 510,000
(・∀・) これで全部費用にできたわけか。
これだと年に1回の決算のとき以外、負債額が合致しない気がする。ほんとは510,000の借金がずっとあるのに、決算以外の時期は負債がないみたいに見える。
(○-○) 確かに支払日までに510,000貯めておかなくてはならないけど、借金があるというのはちがうだろ。支払日に払えばいいって契約なら、支払日当日に払えさえすればその前の日までお金がなくてもいいわけだから。
正確な負債額が帳簿でわからないっていうのは、決算のとき以外にもB/Sを随時作って、そのとき帳簿には載せないけど内部的に振替仕訳の計算をして未払地代の勘定を用意すればすむことだ。
次の問題な。
9月に現金 ¥1,000,000 を貸し付けた。1年後に利息(12%)つきで返済してもらうことになっている。
(利息に関する) 仕訳なし
(・∀・) また仕訳がない。
(○-○) 貸付金の勘定項目は、今回は省略しているぞ。
決算では、9,10,11,12月の4か月分の利息(=1,000,000 * 12% / 12 * 4)を、収益に計上する。(帳簿上受け取ったことにする→にせの「受取利息」収益+。それにあわせて現金を帳簿上受け取ったことにする→「未収利息」資産+)
(借) 未収利息 40,000 (貸) 受取利息 40,000
(○-○) この未収利息は「現金で利息を受け取った」ときの現金の代わりなんだ。
この「未収」ってのは、「未だ収入になっていない…、まだ収入じゃない」という意味だ。
(・∀・) 「未」ってのは「まだ……ない」という意味か!
(○-○) それは漢字の意味そのままだろう。
見越しの場合は「未払い〜」「未収〜」になるぞ。未収(まだ収入じゃない)ってことはあとで収入になるから資産、未払いはまだ払ってない→後で払う義務→負債と覚えてもいいな。
来期の期首で再振替仕訳する。(帳簿上受け取ったことにしたけど受け取っていない→にせの収益を減らす。それにあわせて、資産も減らす
(借) 受取利息 40,000 (貸) 未収利息 40,000
来期の8月に、利息つきで返済してもらった。(受取利息は「実際にうけとった」金額→収益+)
(借) 現金 120,000 (貸) 受取利息 120,000
以上は利息に関する仕訳である(貸付金は無視している)