簿記の学習(26) 精算表

(○-○) 精算表を学ぼう。


(・∀・) 検定試験 受け終わったのに、まだやるの?


(○-○) この勉強は、資格のためというより、確定申告の帳簿作成のためだったからな。確定申告で必要な損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)作るために、精算表の知識があったほうがいいんだ。


日商簿記検定 第111回の第5問を題材に精算表の作り方を学ぶぞ。

第5問
以下に示した 1) 決算日までに判明した未処理の事項 および 2) 決算整理事項 にもとづいて、精算表を作成しなさい。なお、売上原価は仕入の行で求めること。


(・∀・) 「売上原価は仕入の行で……」


(○-○) 2008-09-17 簿記の学習(15)で学んだことだな。今回は「売上原価」を使わずに「仕入」を使うということだ。


答案用紙を見てみよう。


(・∀・) 精算表の中に「なんとか表」というのがある……。
この中で、残高試算表はすでに完成しているね。


(○-○) ああ。これで修正記入すれば、損益計算書貸借対照表ができるというわけだ。
残高試算表の作り方は単に仕訳表を勘定項目ごとにまとめて、残高を計算するだけなので省略するぞ。

それでは問題文をひとつひとつ見ていこう。

第5問 1 - 1

1) 決算日までに判明した未処理の事項

(1) 得意先神奈川商店よりの当座預金口座への振込額¥75,000は受取手形の回収にかかわるものであったが、売掛金の入金として誤って処理されていたことが判明した。


(1)は帳簿を記入しまちがえたので訂正する問題だ。
訂正仕訳のしかたは、まず逆仕訳を与えて借方も貸方もゼロにする、次に正しい仕訳をする、だ。

まちがった仕訳: 当座預金へ振り込み→資産プラス、売掛金の入金→資産(お金を受け取れる権利)マイナス
               (これはすでに残高試算表に書いてあるので、新たに書く必要なし)
(借) 当座預金  75,000    (貸) 売掛金    75,000


訂正仕訳 #1 逆仕訳: 借方貸方(←→)を逆に書くだけ
               (これは新たに書く必要あり)
(借) 売掛金    75,000    (貸) 当座預金  75,000

訂正仕訳 #2 正しい仕訳: 受取手形を回収した→資産(お金を受け取れる権利)マイナス
               (これは新たに書く必要あり)
(借) 当座預金  75,000    (貸) 受取手形  75,000


(・∀・) つまり訂正仕訳は以下の2行になるのかな?

(借) 売掛金    75,000    (貸) 当座預金  75,000
(借) 当座預金  75,000    (貸) 受取手形  75,000


(○-○) まちがってはいないが、これは1行にまとめられるので、まとめる。すると当座預金は消えて、こうなる。

(借) 売掛金    75,000    (貸) 受取手形  75,000


これを精算表の「修正記入」欄に書こう。


第5問 1 - 2

次の問題だ。

(2) 仮払金は修繕費を概算払いしたものである。決算日に至り修繕の完了が確認され、残額¥6,000が返金されてきたが、未記帳であることが判明した。


仮払金は2008-10-08 簿記の学習(19)で学んだ。


精算表の中の残高試算表を見ると、「仮払金」は資産+側(←)に40,000となっている。これがなくなるんだから、仮払金は→に移動して、修繕費(費用+)と返金された現金(資産+)は←側に置く。

(借) 修繕費  34,000    (貸) 仮払金    40,000
     現金     6,000


(・∀・) つまり、こうなるの?


(○-○) それでいいぞ。
次。


第5問 1 - 3

(3) 前受金は埼玉商店より受け取ったものであり、これにかかわる商品売上取引はすでに完了していたが、売上は未計上であることが判明した。

前受金は2008-08-19 簿記の学習(7)で学んだ。予約金とか手付金というやつだな。
この受け取った予約金(負債+)は、売上(収益+)になって売上代金として消えた(負債−)のだから、

(借) 前受金  25,000    (貸) 売上    25,000

となる。修正仕訳はこうなる。


第5問 1 - 4

(4) 出張中の社員より受け取った仮受金は得意先長野商店からの売掛金の回収であることが判明した。

売掛金の回収→資産−、仮受金は負債+だったので売掛金になったから負債−になった。

(借) 仮受金  60,000    (貸) 売掛金   60,000


修正仕訳はこうなるぞ。


(・∀・) ほほう、売掛金の修正は借方(←)にも貸方(→)にもあるのか……。


第5問 2 - 1

2) 決算整理事項

(1) 決算日に至り、現金過不足のうち¥2,000は受取手数料の記入漏れであることが判明したが、残額については原因不明であったので雑益として処理をした。


(○-○) 決算では「現金過不足」はゼロにする、つまり理由不明な勘定項目は無くすことになってるんだ。
理由がどうしても分からないものは雑益または雑損にする。


ところで「現金過不足」というのは借方←にも貸方→にも来れる勘定項目なんだ。
精算表に書かれた数字 (3,000) を見ると、今回は貸方→にある。

受取手数料(収益+)、雑益(収益+)だから仕訳はこうなる。

(借) 現金過不足  3,000    (貸) 受取手数料   2,000
                               雑益         1,000


第5問 2 - 2

(2) 期末商品棚卸高¥112,000


(・∀・) なんだか説明が少ないねー。


(○-○) これは期末の売れ残り(在庫)の金額だよ。「売上原価」を計算しなさい、という問題だ。


売上原価は、2008-09-17 簿記の学習(15)で学んだとおり、以下のように計算するんだったね。

売上原価 = 去年の売れ残り+今年の仕入−今年の売れ残り
  • 「去年の売れ残り(期首商品棚卸高)」というのは残高試算表に書いてある繰越商品
  • 「今年の仕入」は残高試算表に書いてある仕入
  • 「今年の売れ残り」は問題に書いてある期末商品棚卸高


この問題は最初に「売上原価は仕入の行で求める」と書いてあったから、「売上原価」ではなく「仕入」をつかって求めるぞ。


仕訳で書くとこうなる。

(借) 仕入  1,350,000    (貸) 繰越商品   163,000
(借) 繰越商品  112,000  (貸) 仕入       112,000


(・∀・) ぬぬ?


(○-○) この仕訳の1行目は、(残高試算表から)繰越商品を減らしてゼロにする(資産−)、繰越商品文の金額を全部、仕入に加える(費用+)。
つまり「去年の売れ残り+今年の仕入」の計算をしている。


2行目は、仕入の金額から「今年の売れ残り」ぶんを減らす(費用−)、繰越商品に「今年の売れ残り」ぶんの金額をたす(資産+)。
つまり「仕入−今年の売れ残り」の計算をしている。


(・∀・) なるほど。この2つの仕訳で「(新)仕入= 去年の売れ残り+今年の仕入−今年の売れ残り」の計算をしたのか。


(○-○) これを精算表に書くとこうなる。


(・∀・) ……


(○-○) 「修正記入」欄をこう書くのは分かるだろ? さっきの仕訳を転記しただけだ。


(・∀・) うん


(○-○) 損益計算書貸借対照表の書き方もここで説明しよう。
「繰越商品」は資産だから貸借対照表(資産・負債・純資産のみ掲載する表)に書くことになる。
仕入」は費用だから、損益計算書(収益と費用のみ書く表)に書くことになる。


(・∀・) ふむふむ


(○-○) 仕入は費用なので、基本的に借方(←)にあるものだろう?だから、修正記入の借方(←)に書いた金額はプラスするんだ。
そして逆側の貸方(→)に書いた金額はマイナスする。


その計算結果を損益計算書に書く。
これが精算表の書き方だ。


(・∀・) オレンジの + − = はその計算をわかりやすく図示しているだけということか。


(○-○) 繰越商品は資産だからやっぱり借方(←)がプラスになる。


(・∀・) ところでさ、このあとは全部、「仕訳を作る→修正記入欄に記入→損益計算書貸借対照表に記入」の順番でするのかな?


(○-○) いや、その順番じゃなくてもいいんだ。


A. この問題だと、「期末商品棚卸高¥112,000」と書いてあるからいきなり貸借対照表の繰越商品に 112,000 と書いてもいい。
期末商品棚卸高というのは、まさに貸借対照表に載せる繰越商品のことだからな。計算しなくても、こうなる。


B. すると修正記入欄は、計算しなくても「(借) 112,000 (貸) 163,000」と決まる。


C. すると「仕訳の借方貸方の金額は一致する」というルールによって、仕入のところには「(借) 163,000 (貸) 112,000」と記入されることがわかる。


D. 最後に、仕入の計算をして、損益計算書に書く 1,401,000 という金額が求まる。


というやり方で解いてもいいんだ。むしろこっちのほうが簡単だ。



第5問 2 - 3

(3) 受取手形売掛金の期末残高に対して差額補充法により5%の貸倒引当金を設定する。

(○-○) 貸倒引当金2008-09-09 簿記の学習(13)で学んだ。

これを精算表で解くと、こうなる。


(A) 受取手形売掛金の修正済み確定金額を貸借対照表に記入。

まず問題文の「期末残高」っていうのは損益計算書貸借対照表に書く金額のことなんだ。
だからまず受取手形売掛金について、まず損益計算書貸借対照表に記入するぞ。
修正記入欄に書いてある数字は、借方(←)のをプラスして貸方(→)をマイナスする。受取手形売掛金も「資産」だから。
つまり「受取手形=283000-75000」「売掛金=177000+75000-60000」という計算をする。



(B) 貸倒引当金の金額を求める。貸借対照表に記入。

次に、受取手形売掛金の金額の5%を求める。
受取手形の5%+売掛金の5%」を求めるわけだが、「(受取手形売掛金)の5%」という計算式でも結果は同じになるぞ。
「208000 * 5% + 192000 * 5%」という計算をする。「%」のままでも電卓でもExcelでも使えるので使っていこう。



(C) 差額補充法による修正金額を求めて、修正記入欄を記入する。

貸倒引当金は「資産マイナス」だから、貸方(→)の位置にある。
だから、貸借対照表の「資産」の反対側に書くんだ。
ということは、修正記入欄の貸方(→)がプラスになる。

問題文は「差額補充法」って書いてあるけど、ようするに残高試算表にもともとある数字(18000)と修正記入欄の数字(X)を足したら「受取手形の5%+売掛金の5%」(20000)になるようにしましょう、って方法だ。
つまり「18000 + X = 20000」なんだから、Xは 2000 だな。



(D) 貸倒引当金繰入も、修正記入する。

修正記入欄の貸方(→)に書いた数字は同額を借方(←)にも書かなくてはならない。
「仕訳の借方貸方の金額は一致する」というルールがあるからな。
というか以下の仕訳になるから「貸倒引当金繰入」にも修正記入する。

(借) 貸倒引当金繰入    2,000    (貸) 貸倒引当金  2,000

(E) 貸倒引当金繰入を損益計算書に転記。

貸倒引当金繰入は「費用+」だから、損益計算書のほうに転記する。


こういう解き方になる。


(・∀・) ふーん。この問題の仕訳って、この1個だけなの?

(借) 貸倒引当金繰入    2,000    (貸) 貸倒引当金  2,000


(○-○) そうだよ。あとは仕訳には ならない。だから精算表で書いていったほうが解きやすい。


第5問 2 - 4

(4) 売買目的有価証券を¥160,000に評価替えする。

(○-○) 精算表では こうなる。


(A) 貸借対照表に記入。

売買目的有価証券は2008-08-13 簿記の学習(5)で学んだ。
売買目的有価証券を時価評価したら¥160,000になったっていうんだから、その価格は そのまま貸借対照表に載せる金額だ。


(B) 修正記入欄に記入。

試算表では¥165,000だったのが、¥160,000になったということはマイナス5000円ということだ。
売買目的有価証券は資産つまり借方(←)がプラスなので、マイナスのときは貸方(→)に書く。


(C) 有価証券評価損を記入。

修正記入欄の貸方(→)に書いた数字は同額を借方(←)にも書かなくてはならない。
そこで、有価証券評価損(費用+)修正記入欄に、同額を書き写す。
仕訳はこうなる。

(借) 有価証券評価損    5,000    (貸) 売買目的有価証券  5,000


(・∀・) いきなり貸借対照表に記入するってやりかた、つかえるね……


第5問 2 - 5

(5) 建物および備品に対して定額法により減価償却を行う。残存価値はともに取得原価の10%とし、耐用年数は建物25年、備品は6年である。


(○-○) 減価償却2008-09-10 簿記の学習(14)で学んだ。

まずはそれぞれの減価償却費を求める。
建物の減価償却費: ¥1,000,000 × 0.9 ÷ 25年 = ¥36,000/年
備品の減価償却費: ¥200,000 × 0.9 ÷ 6年 = ¥30,000/年
この0.9というのは10%を引いた→90%=0.9という意味だぞ。

仕訳はこうなるな。
減価償却費は費用+(←)、減価償却累計額は資産マイナス(→)。

(借) 減価償却費    66,000    (貸) 建物減価償却累計額  36,000
                                  備品減価償却累計額  36,000

修正記入欄に記入。
そして、B/S・P/Lに記入だ。

減価償却の場合は、B/S・P/Lへの記入は最後になるな。


(・∀・) これは、いきなり貸借対照表に記入できないのか……


第5問 2 - 6

(6) 受取手数料の前受額が¥3,000ある。


(○-○) 繰延べ、見越しは2008-09-18 簿記の学習(16)で学んだ。

「前受」っていうのは「すでに受け取ったけど、まだ使っていない(来年使う)ぶんは、今年は受け取っていないことにする」だったな。
今年の受取手数料を減らして(収益−)(←) 受け取っていないことにする。その代わり、前受手数料は負債+(→)を増やす。

(借) 受取手数料  3,000    (貸) 前受手数料  3,000

第5問 2 - 7

(7) 給料の未払額が¥25,000ある。

「未払」は「まだ払っていないけど、今年使用したぶんなので、払ったことにする」だった。
給料の支払額を増やして(費用+)(←) 払ったことにする。そのぶん未払給料(負債+)(→)も計上する。

(借) 給料  25,000    (貸) 未払給料  25,000

第5問 2 - 8

(8) 保険料の前払額が¥4,000ある。

「前払」は「すでに払ったけど、それは来年のぶんなので、そのぶんは払っていないことにする」だな。
保険料の支払いを減らして(費用−) 払っていないことにする。そのぶん前払保険料(資産+)を増やす。

(借) 前払保険料  25,000    (貸) 保険料  4,000

第5問 2 - 9

(9) 支払利息の未払額が¥1,000ある。

「未払」は「まだ払っていないけど、今年使用したぶんは、支払ったことにする」だ。
支払利息を増やして (費用+) 支払ったことにする。そのぶん、未払利息(負債+)も増やす。

(借) 支払利息  1,000    (貸) 未払利息  1,000


(・∀・) や、ややこしー。


(○-○) 以下のように覚えたほうが覚えやすいな。

前受け→すでに受け取った→あとで使用する義務がある→負債、前払い→すでに払った→なんか権利を得た→資産 と考えてもいい。
未収(まだ収入じゃない)ってことはあとで収入になるから資産、未払いはまだ払ってない→後で払う義務→負債と覚えてもいいな。


これで修正記入欄はすべて埋まった。
この修正記入欄で修正した勘定項目を、B/S・P/Lに転記すると、精算表は以下のようになる。



(・∀・) 一番下の、合計のところが合ってないねえ。


(○-○) 修正記入のところは借方(←)貸方(→)が一致する。でも、B/S・P/Lの借方貸方は一致しないのが普通だ。この差は利益(当期純利益)または損失(当期純損失)なんだ。


損益計算書(P/L)見ると、収益(→)の側が多い。つまり利益があったということ。収益−費用の計算すると、当期純利益の金額が分かる。それを、合計の少ないほう(←)に書くんだ。すると、P/Lの合計が一致する。


そして貸借対照表(B/S)のほうの差も、当期純利益の額と同じになるはずなんだ。当期純利益は「純資産」なので、B/Sでは貸方(→)に書く。


最終的な精算表は、こうなる。


(・∀・) ふーむ。なるほどなるほど。
これでようやく損益計算書貸借対照表の作り方がわかったのか。