簿記の学習(15) 分記法と三分法、売上原価2

(○-○) 分記法(ぶんきほう)と三分法(さんぶんぽう)を学びなおそう。


(・∀・) 簿記3級では三分法しか出ないんでしょ?


(○-○) いや、分記法は簿記4級の範囲で、三分法は簿記3級の範囲だから、分記法も学習済みの範囲なんだ。たまに出てくるし。それに固定資産(土地や備品)や有価証券の扱い……

簡単にいうと、以下の違いがあるんだ。

分記法 .. 原価・売買益(「商品」「商品売買益」)の 2つ に分けて記帳する
三分法 .. 仕入・販売・在庫 (「仕入」「売上」「繰越商品」)の 3つ に分けて記帳する


(・∀・) 分記法はニ分法って呼んでくれれば区別しやすいのに。


(○-○) まず三分法の復習な。

¥4,300の商品を100個、現金で仕入れた。(費用+、資産−)

(借) 仕入  430,000      (貸) 現金  430,000

商品を¥4,800で100個、掛けで販売した。(資産+、収益+)

(借) 売掛金  480,000      (貸) 売上  480,000

しかし2個は客がキャンセルしたので返品された。(収益−、資産−)

(借) 売上 9,600      (貸) 売掛金  9,600

箱がつぶれているとかクレームうけたので、販売後に値引きした。4個を半額にした。(収益−、資産−)

(借) 売上 9,600      (貸) 売掛金  9,600

決算になり、商品が2個残っていた。(商品2個ぶんの仕入「費用」を繰越商品「資産」に一時的に振り替える→つまり仕入を一時的に0にして、繰越商品をその額にする)

(借) 繰越商品 9,600      (貸) 仕入  9,600

しばらく後になるが「次期の決算」のときに、再振替仕訳する (繰越商品勘定を0にして、仕入勘定に戻す=去年の売れ残りは今年仕入れしたことにして決算する)

(借) 仕入  9,600      (貸) 繰越商品 9,600


(・∀・) ふむ。返品と値引きが同じ仕訳になってる。


これを分記法であらわすと……

¥4,300の商品を100個、現金で仕入れた。(資産+、資産−)

(借) 商品  430,000      (貸) 現金  430,000

商品を¥4,800で100個、掛けで販売した。(資産+、資産−、収益+)

(借) 売掛金  480,000      (貸) 商品        430,000
                               商品販売益   50,000

しかし2個は客がキャンセルしたので返品された。(資産+、収益−、資産−)

(借) 商品       8,600      (貸) 売掛金  9,600
     商品販売益 1,000

箱がつぶれているとかクレームうけたので、販売後に値引きした。4個を半額にした。(収益−、資産−)

(借) 商品販売益 9,600      (貸) 売掛金  9,600

決算になり、商品が2個残っていた。(「仕入」(費用)ではなく最初から「商品」(資産)の勘定を使っているので)

仕訳なし


(・∀・) ゲッ!商品販売益が50,000しかないのに、値引きしたら 9,600も稼ぎが減ってしまった。


(○-○) 返品は商品が返ってくるが、値引きだと返ってこないからな。


(・∀・) 三分法だと、稼ぎが減ったことが分からなくなるのが怖い。


(○-○) 確かに分記法のほうが分かりやすくてシンプルだ。だから4級で習うんだけど、でも商品を売るときにひとつひとつ原価(仕入れ値、仕入原価)を調べる必要があって、帳簿をつけるのが面倒なんだ。商品を大量に扱うときは三分法のほうがラクだぞ。





ところで三分法では上でやった「仕入」勘定以外に、「売上原価」勘定をする方法もある。

三分法 売上原価勘定な。

¥4,300の商品を100個、現金で仕入れた。(費用+、資産−)

(借) 仕入  430,000      (貸) 現金  430,000

商品を¥4,800で100個、掛けで販売した。(資産+、収益+)

(借) 売掛金  480,000      (貸) 売上  480,000

しかし2個は客がキャンセルしたので返品された。(収益−、資産−)

(借) 売上 9,600      (貸) 売掛金  9,600

箱がつぶれているとかクレームうけたので、販売後に値引きした。4個を半額にした。(収益−、資産−)

(借) 売上 9,600      (貸) 売掛金  9,600

ここまでは「三分法 仕入勘定」のときと同じで、ここからちがう。


決算になり、当期商品純仕入高を売上原価に振り替える。(仕入(費用)→売上原価(費用)に変換。仕入れを0にする)

(借) 売上原価 430,000      (貸) 仕入  430,000

商品が2個残っていた。(商品2個ぶんの売上原価(費用)をマイナスして、繰越商品(資産)を増やす)

(借) 繰越商品 9,600      (貸) 売上原価  9,600

しばらく後になるが次期の決算で、再振替仕訳する (繰越商品勘定を0にして、売上原価に戻す)

(借) 売上原価  9,600      (貸) 繰越商品 9,600


(・∀・) なるほど、この場合「売上−売上原価=商品販売益」という分かりやすい計算で商品販売益がだせるね。


(○-○) そうなんだ。ややこしく見えるかもしれないが、

売上原価勘定を使うときの「売上原価」は、使わないときの「仕入」と同じ額になるんだ。
売上原価勘定を使うときは「仕入」は0になって「仕入」のぶんをまるごと「売上原価」と名前を変えるだけだ。
同じものを「売上原価」と呼ぶか、「仕入」と呼ぶだけの違いなんだよ。